拡張型心筋症

概要

特発性拡張型心筋症とは、心臓の筋肉の収縮する機能が低下し、特に左心室が拡張する病気です。これにより全身に血液を送り出すポンプ機能が弱まります。高血圧や心筋梗塞などの明確な原因がないものがこの病気に該当します。

患者数と発症傾向

令和4年度末時点で、この病気の医療受給者証を持つ患者は約18,234人で、日本の人口の約2000人に1人の割合です。60歳前後に多く見られ、男女比では男性が女性の約2.6倍です。

原因と遺伝の可能性

原因は明確にわかっていません。家族内発症が約5%あり、家族性の拡張型心筋症のうち、約20%の方で遺伝子バリアントが確認されています。ウイルス感染や免疫異常が発症に関与する可能性も報告されています。

主な症状

病気の初期は無症状のことが多く、初めに出る症状としては、動悸、息切れ、疲労感などがあります。進行すると夜間の呼吸困難や浮腫、不整脈がみられるようになります。特に重度の不整脈は突然死のリスクを伴います。また、心臓内に血栓ができ、塞栓症を引き起こすこともあります。

診断方法

胸部X線写真や心電図、心エコーで異常が認められます。確定診断のためには、心臓カテーテル検査や冠動脈CT検査で冠動脈疾患を除外することが重要であり、類似した病気の鑑別に心筋生検が役立つ場合があります。

経過と予後

慢性進行性のことがあり、国内の心臓移植の多くが拡張型心筋症患者です。過去の調査では、5年生存率は76%とされていますが、治療法の進歩により予後は改善してきています

日常生活での注意点

塩分制限が最も重要で、軽症では1日6 g以下とし、重症では3g以下の厳格な塩分制限が必要な場合があります。アルコール摂取は控えめにし、肥満がある場合は減量が必要です。体重増加が急な場合は心不全悪化の兆候であり、早期受診が求められます。運動は医師の指導のもとで行い、禁煙を行う必要があります。また、精神的ストレスも病状に影響するため、必要に応じて専門的なケアを受けることが推奨されます。