拘束型心筋症

概要

拘束型心筋症は、心室の肥大や拡張がなく、一見すると心臓の動きが正常に見えますが、心筋が硬くて広がりにくくなるために心不全の症状を引き起こす疾患です。この病態は、さまざまな基礎疾患に関連する「二次性拘束型心筋症」として発生することもありますが、「拘束型心筋症」と言う場合は、原因が不明な「特発性拘束型心筋症」をさします。

患者数と発症傾向

特発性拘束型心筋症の患者数は明確には不明ですが、他の心筋症(拡張型心筋症や肥大型心筋症)に比べると非常に稀です。アフリカ、インド、中南米、そして一部のアジアで比較的多く見られるとされています。

どのような人に多いのか

年齢や性別、居住地による発症リスクの違いは現在のところ報告されていません。特定の人々が発症しやすいという明確な傾向はないと考えられます。

原因

原因は明確にはわかっていません。二次性の場合でも、発症メカニズムが完全には解明されていないことが多いです。

遺伝性

心臓の構造を決定する遺伝子に変異が見られることがあり、家系内で発症するケースもありますが、非常に稀です。そのため、一般的な意味での遺伝リスクは低いとされています。

症状

軽症では症状がないこともありますが、進行すると、息切れ、むくみ、動悸、倦怠感・疲労感、肝臓や脾臓の腫大、腹水があらわれることがあります。また、心房細動という不整脈がみられことがあり、これが原因で血栓が生じ、脳や腎臓での塞栓症(血栓の詰まり)を引き起こすリスクがあがります。

治療法

治療方針は、特発性と二次性によって異なり、まず収縮性心膜炎との鑑別が重要です。 治療は、心不全の治療、不整脈の治療、血栓・塞栓症の予防です。心不全の治療では、利尿薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)が用いられ、心房細動などの不整脈がある場合は、β遮断薬やカルシウム拮抗薬が使用され、塞栓症予防のため長期的な抗凝固療法が必要となります。また、必要に応じてジギタリスや抗不整脈薬も使用されます。

病気の経過

特発性拘束型心筋症の予後はあまり良くなく、成人例では5年生存率が約64%、10年生存率が約37%と海外では報告されていますが、日本人にそのまま適用できるかは不明です。小児の場合、死亡または移植を除く5年、10年生存率は、それぞれ40%、34%という報告があり、積極的な心臓移植の検討が必要になることがあります。
二次性拘束型心筋症の中でも、アミロイドーシスによるものは予後が非常に悪く、心不全症状が出現してから半年ほどで亡くなるケースもあります。